5月1日~5月31日「個展」SIGE STATEMENT

横浜GrassRootsのブログ

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SIGE STATEMENT

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近年、インターネットの爆発的な普及により、私たちはそれまでではあり得ない程の情報を目にし耳にするようになりました。沢山の真実や嘘を知った現代人は、そのストレスを徐々に無意識の領域へ蓄積させていき、やがてそれは、不安や不信などといった形で、少しずつ意識に影響を与え続けます。

個人ブログやFacebook、Instagram、ストリートビュー等が存在する現代では、それらが無かった10数年前までとは「プライバシー」のあり方は違っているのかもしれません。米Google社は、ある裁判で「現代には完全なプライバシーなど存在しない」と答弁しました。そして、日本の総務省では、顔に「ぼかし」があればプライバシーや肖像権は侵していないという見解を表明しています。しかし、人の個性は必ずしも顔だけにあるわけではなく、体格やファッション、さらには身体障害者の身体的特徴などにも個性は存在していて、本個展で展示している【顔を隠された肖像】シリーズのように、その肖像を知る者(家族、友人、同僚など)が見れば、顔を隠されていても、案外簡単に分かってしまうものだと思います。
そんな、日常的にプライバシーを侵害される可能性を無意識で感じている現代の人々は、プライバシーを侵害された時の準備、つまり、自分の言動について他人に侵害された時の対応(というか言い訳)を考えておくような行動に出るのかもしれません。

今日の日本では、「良くすること」よりも「悪くならないこと」が重要視され、皆一列に並んで立ち止まり、隣人が一歩踏み出す事を期待と批判の目で眺めています。自分がミスを犯し責められないよう周りを気にして、とても窮屈に感じながらも、「他人の目に、自分が悪く映らない」という事が大事に思われているようです。

そして、現代のような情報化社会では、力のある少数の企業によって文化産業が独占され、消費者が偏りの無い健全な道徳や判断力を失ったり、「豊かさ」について誤った理解をしたり、文化的な多様性や創造性が失われ、さらには、自由で多様な言論が流通する民主主義が脅かされ、少数派の意見、企業や資本主義を批判する意見などが抑圧されています。
作品【縮図】では、壮大で超自然的な全体像と、隠れるようにして存在する人工的なモノリスで、「人為」(自然の状態に人が手を加えること)を描いています。さらに、沢山の物体が、中心にある宇宙(自由)を目指しせめぎ合い窮屈になっている様子や、ビッグバン理論に基づき爆発膨張する宇宙の形と、花びらを開く一輪の花を対比し、世の中の全ての物の共通性を表現しています。

情報の氾濫により沢山の苦痛を受けた現代人は、ごく当たり前に「反応」し、新しい時代に対して「順応」していくのでしょう。こんな情報化社会の現代では、今自分が当たり前に思っている価値観や倫理観なんかも、改めて考え直してみる事が大事なのかもしれません。

顔を隠された肖像「M」 / 2012
縮図 / 2012

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